たとえば、こんな人生も

｢私は平気です｣

｢君が自分を犠牲にして、父親を
｢誰か｣を守る必要はない｣


……。


オーナーは気付いてる


私に暴力を振るうことで
あの人は壊れそうな自分を
なんとか持たせてること

私がいなくなったらきっと
別の｢誰か｣にそれを向けることになるってこと


おかしくなって
壊れていく姿を見るのが嫌だから

誰かを傷つけたり
誰かが傷つくのが嫌だから

私がずっと、あの場所から離れなかったこと

嫌悪感や不快感を抱きながらも
今でも私がその気持ちを引きずって

あの場所から離れないこと



断ち切れない『情』に縛られてること




｢ひなた。君は君の事だけ考えなさい
父親や、見ず知らずの｢誰か｣を守ることより
自分を守りなさい｣

｢…｣

｢あの家から、父親から離れなさい｣

｢でも、｣

｢これはお願いじゃない。雇い主からの｢命令｣だ｣

｢…｣

｢君を引き取ると
申し出てきた｢姫｣はたくさんいる｣

｢……姉さん達の所には行きたくありません
絶体、行きません｣



一時的だとしても
その一時的がいつまでなのかも定かじゃない

私の存在はただの重荷になる

それぞれ事情を抱えた姉さん達に
これ以上負担や心労を増やすような真似をさせたくない