たとえば、こんな人生も
そっと近付けば
呼び声に気付いたいつきさんが振り返る


「おなか、空いてない?何か食べる?」


ふるふると首を横に振る


「そう。お風呂は?」

「……お風呂は、入りたいです」

「お風呂はあっち
タオルとかシャンプーとか好きに使って
あと、これ」


傍に置いてた紙袋を私に差し出す


「下着とか替えの服とかだって
さっきアリサさん達が置いていったから」

「…姉さん達、来たんですか?」

「うん。ついさっきね
君の寝顔を見て帰って行ったよ」

「…………そうですか。
…お風呂、お借りします」

「どうぞ」



お風呂も想像以上に豪華な造りだった

落ち着かなくて

お湯は張ってあったけど
浴槽には浸からず、シャワーだけ浴びて

置いてあったドライヤーで髪を乾かして
すぐにリビングに戻ってきた

いつきさんはお仕事中みたいだったから
挨拶だけして
すぐ部屋に戻ろうとしたけど



「ひなたちゃん
ホットミルクなら飲める?」



そんな感じに引き留められた




「……おいしい」

「そう。良かった」



ソファーに座って


マグカップに注がれたホットミルクを
そっと口に入れた


……はちみつか何か入ってるのかな

甘くて、おいしい


…………ほっとする
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