たとえば、こんな人生も
「保護団体もあるし、そういう施設もある」


「色々制限や決まりが多くて
窮屈になるかもしれないけど
今の生活よりはましな日々を送れる」


「選択肢なんてたくさんある」


「……」


「……て、ごめん。
色々あって疲れてるのに
さらに疲れる話しちゃったね」


その話を黙って聞いていた私に
いつきさんは困ったように笑う


首を横に振る


「……そういう話を聞けて良かった
姉さん達は、私に見せないようにしてたから
ずっと目隠しされてたんです」


姉さん達が生きてる世界をちゃんと知りたくて

でも、聞いても姉さん達は困ったように笑って

するりとかわされたり
はぐらかされたりして



「私が、子供だから」



「必ずしも売れるなんて限らないこと
厳しいこと、辛いことの方が多いこと
綺麗な世界じゃないこと
そういうことは分かってても
詳しいことは何も分からなかったから」



「だから、早く「大人」になりたかった
姉さん達みたいな「女」の人に」




「……まわりに
迷惑をかけないで生きていけるようになりたいんです」
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