たとえば、こんな人生も
「いつきさん」

「なに?」

「なにか私に出来ることないですか?」


食べ終えた後

飲み物を淹れてくれてるいつきさんに
私は話を切り出した


「なにもすることがなくて……落ち着かなくて」

「テレビとか見ながら
のんびりしてていいんだよ?」

「じっとしてるのが嫌で」


差し出されたカップから立ち上る湯気を眺めて、それからまたいつきさんに視線を戻す


「お店に行っちゃだめですか?
軽い雑用ならー」

「だめ」


言い切る前に笑顔で拒否される


「仕事しに行くのはだめ
ひなたちゃん、自分の怪我の酷さ自覚してないでしょ?」

「…」


拒否されて肩を落とす
分かりやすく落ち込む私を見兼ねて


「……じゃあ、料理とかお菓子作りでもやってみる?」


いつきさんはそんな提案をした



「…料理とお菓子?」
< 48 / 177 >

この作品をシェア

pagetop