たとえば、こんな人生も
テーブルの上には
おしゃれな料理がたくさん並んでる

きらきらしたデザートもたくさん

半分は頼んだものだけど
もう半分はいつきさんが作ったもの


「ん!これ、おいし~っ」

「あら、本当」


いつきさんが作ったケーキを食べた姉さん達は

ほっぺたを手で押さえて
それから幸せそうな笑顔を浮かべる


すごいなぁ、いつきさん


……私もはやく
姉さん達をそんな風に笑顔にさせられるお菓子を作れるようになりたいな


美味しそうにケーキを食べてるそんな姉さん達を
ほわんとした気持ちで眺めていると


唐突に

背後からぎゅ~っと抱き締められる



「ひ~なた~」

「アリサ姉さん」

「も~離さないから~」



お酒の匂いがする

来てそうそう
料理よりもお酒に走った様子のアリサ姉さん


甘い声を出しながら
すりすりと私のほっぺたに頬ずりする


「だから嫌なのよ
飲むと見境なくなるから。アリサは」

「仕方ないよ。ひなたは可愛いから」

「あんたもひなたを溺愛してるわね」

「可愛いからね
さゆだって同じ癖に」

「…」



お酒を飲みながら笑って肯定する
美冬(みふゆ)ちゃん

その言葉にさゆ姉さんは無言で目を逸らす


……さゆ姉さん、照れてる



「ねぇ、アリサ
そろそろ美冬と交換してくれる?
美冬もひなたを抱き締めたい」

「だ~め~っ、ひなたは私の~っ」


両手を伸ばして『ちょーだい』のポーズをとる美冬ちゃん

アリサ姉さんはさらに私を強く抱き締めて
嫌々と首を振る
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