たとえば、こんな人生も

そっといつきさんの部屋に足を踏み入れる

一応ノックはしたけど返事がなかったから
そのまま勝手に入ってしまった



……いつきさんの部屋も広いなぁ


淡い照明に照らされる室内は
シックなデザイン

だけど、あんまり物は置いてなくて
少し空間を持て余してる感じ



…あ、いた


奥の方の大きなベッドの上に横になってるいつきさんを見つけて、近付く

近くのテーブルの上に
ピッチャーとグラスを置いて


じっといつきさんを見つめる


ほんのり赤く色づいた顔のまま
静かに眠っているいつきさん



……大丈夫そうかな



｢…｣



『もうしばらく君はいつきの所にいなさい』



ほっとした瞬間に頭に浮かんだオーナーの言葉



……いつきさんと一緒にいるのは嫌じゃないし
一緒に料理をしたり、話をしたりするのも楽しい


だけど、やっぱり


お世話になり続ける事には抵抗がある



｢……｣



……。



……もう少し待てば、時間が経てば


何か変わるかもしれないって


ずっと思ってた



捨てきれない期待を抱えてた



心の奥で、ずっと