たとえば、こんな人生も
だけど



変わらないんじゃないかって

もうずっとあのままなんじゃないかって


そんな思いが今は強くなってきて


心の奥の僅かなその期待さえ


消えてしまいそうになる



落ち着くまでってオーナー達は言う



だけど


私がいないから
あの人の症状は悪化してるんじゃないの?


私がいないから更に苛立って、暴れて



そのせいで



誰かを傷付けたら?




そんなことを思うと


結局、私があの場所にいることが
一番、被害を出さない最善な選択な気がしてくる



姉さん達を悲しませたくない、心配させたくない

誰かに迷惑をかけたくない

まわりを巻き込みたくない

あの人も見捨てられない



全部は選べない

必ずどれかを、誰かを傷付ける



「……私、どうしたらいいんだろ」



……分からない



「…………忘れられたらいいのに」



こんな『思い』も、『情』も


なにもかも忘れて


抱える悩みから解放されたい



……
……
……




『ひなた』



浮かんだ声と笑顔に心が揺れる



……会いたい


………………お母さんの所に、いきたい
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