たとえば、こんな人生も
その日の夜



「……ごめんね、ひな」

「ううん、私の事は気にしないで
早く行ってあげて」



夕方頃にまこちゃんに電話が入った


お家からで


最近ずっと具合の悪かった
まこちゃんのおじいちゃんが倒れて病院に運ばれたって

大事には至らないって話だったけど

心配だからと
まこちゃんはお家に戻ることになって



「……ひとりで大丈夫?
やっぱり誰かに……」

「大丈夫」


私をひとりにすることが気がかりみたいで
まこちゃんはずっと心配そうな表情を浮かべてる


笑って頷いて、まこちゃんの背中をぐいぐい押す



「ほら、早く行ってあげて」

「……うん。ちゃんとごはん食べるんだよ
戸締まり、気を付けてね」

「うん」



ひらひらと手を振って、まこちゃんを見送った



……
……
……



「……」




振っていた手をそっと下ろす




……うん。




「…大丈夫」




ひとりなんて慣れっこ
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