たとえば、こんな人生も
6
「ひ~な~た~っ!」

「むぐっ」


お店の裏口を開けた瞬間
むにゅりとした柔らかい何かに顔が埋まる


「やっと会えた!」

「っぷは……アリサ姉さん」


ぎゅーっと私を抱き締めたのは
アリサ姉さんだった

アリサ姉さんの胸に埋まってた顔を上げて
嬉しそうに笑う姉さんを見上げる


「元気だった?」

「うん
姉さんずっとここで待っててくれたの?」

「待ちきれなくてね
ほんとは学校まで迎えに行きたかったんだけど」


「あんたが行ったら目立つのよ
ひなたの迷惑になるからやめなさい」


「さゆ姉さん」


アリサ姉さんの後ろから現れたさゆ姉さん

軽くアリサ姉さんの頭を小突くと
私の傍に近づいて、そっと頭に手を置いた


「…大丈夫そうね」


確かめるように
独り言のように呟いて、私を見る

体調や怪我の事を言ってるんだろう


「うん」


ほっとするようなその顔に
笑顔を返せば、ゆっくり離れていく手


「オーナーが呼んでるわ
行ってきなさい」
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