たとえば、こんな人生も
聞けばまだ義務教育中、学生の弟妹もいるとのこと

お母さんがあまり働きに出れないと言うことは
学費や生活費、そういったお金に関して諸々は
ほとんどいつきさんが工面してる状態なんだろう


問いかけに
いつきさんは笑って首を横に振る



「違うよ。俺のため」



「誰かのため、なんて思ったことはないよ
俺はいつだって俺のために動いてる」


「母親が弱っていくのが
死んでしまうのが嫌だったから
弟や妹に苦しい生活を強いるのが
我慢をさせるのが嫌だったから」


「今もそう
だから、ここにいる」


「家族だから
大切だから笑ってて欲しい」


「それだけだよ」



…それを、なんのてらいもなく
自分のためと言い切れるのがすごいと思った


街灯に照らされるいつきさんの顔はどこまでも穏やかで

きっと、いつきさんだって
たくさん苦労や辛い思いをしてきただろうに

それを微塵も感じさせずに笑ってる




「…いつきさんも、姉さん達と同じですね」

「ん?」

「姉さんやいつきさんみたいなひと
私、すごく好きです」
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