白雪姫に極甘な毒リンゴを
お昼休みになった。
自分の席に座る私の横を
通り過ぎる七星くん。
目を合わせたら、
好きって気持ちが抑えきれなくなりそうで、
急いで窓の外に目をやった。
七星くんが遠ざかったのを察知して、
お弁当を食べる準備をしようとした時
机に置かれた1枚の紙に気が付いた。
え?
どういうこと?
その紙には
『今から理科準備室に来てほしい。 七星』
と書いてあった。
よく理解ができなくて、
何度も何度もメッセージを読み返す。
どういうこと?
七星くんに、呼び出されたってこと?
本当に私あてなのかな?
違う人に書いた紙が、
風で飛ばされちゃったのかな?
どうしよう。 どうしよう。
悩めば悩むほど、
答えなんて出てきてくれない。
クルミちゃんと付き合っている
七星くんに会って、
私は何を話せばいい?
『くるみちゃんと付き合えてよかったね』
って、笑顔で言えばいい?
それとも
『七星くんのこと、好きです』って、
自分の気持ちを伝えればいい??
どっちも、今の私には無理だよ。
そんな勇気、さらさらない。
でも……
七星くんと……
話したい……
この2週間、ずっと無視されてきたから、
恋しくなっている自分がいる。
七星くんの穏やかな声も、
陽だまりみたいな温かな微笑も。
私は桃ちゃんの所に行って、
七星くんが書いた紙を見せながら言った。
「私、七星くんに
会いに行ってきていいと思う?」
「六花が良いと思えば、
そうするべきなんじゃない?」
桃ちゃんの笑顔が、
私を優しく包み込んでくれた。
「ありがとう、桃ちゃん」
大好きだよって全身で伝えたくて、
ムササビみたいに手を広げて
ももちゃんに抱きつくと、
私は教室を後にした。