白雪姫に極甘な毒リンゴを

 
 知らなかった。


 紫音くん、そんなことを言っていたんだ。
 七星くんに。


 星空のペンケースを買ったあの日、
 紫音くんの前で
 ボロボロ泣いちゃったからかな。


 『七星くんのことは、もう忘れる』って、
 誓ったからかな。


 だから、
 七星くんが今までみたいに
 私に期待させるような態度をとらないように、
 嘘をついてくれたのかな。


 七星くんに、
 どう説明したらいいかわからないよ。


 だって本当のことを話したら、
 『七星くんが好きです』って、
 伝えちゃうようなものだから。


 でも……


 今が良い機会なのかもしれない。


 七星くんのことを完全に吹っ切る、良い機会。


 私は瞳を閉じ、深く深呼吸をした。


 そして、報われない恋を引きずり続けている
 ダメダメな自分と、
 サヨナラする覚悟を決めた。

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