白雪姫に極甘な毒リンゴを


「七星くん……

 重たい本を、
 図書室に運んでくれた日のこと、覚えてる?」


「え? それって確か…… 小5くらい?」


「うん……。

 その時からずっと……

 七星くんのことが……

 好きです……」



 フラれるってわかっていたけど、
 必死に笑顔を作って思いを伝えてみた。

 
 彼女がいる人に告白するなんて、
 バカみたいって自分でも思う。


 でも、はっきり振ってもらわないと、
 前に進めそうにないから。
 

 いきなり、こんな私なんかに告白されて、
 迷惑だったよね?


 七星くんの顔を見る勇気はないけど、
 この沈黙が教えてくれた。
 

 七星くんは間違いなく
 私のことなんて好きじゃないって。

 
 告白するまえから、
 100%フラれることは
 わかっていたはずなのに、
 思っていた以上に
 心がギューっと締め付けられて、
 泣きたくなんてないのに涙が溢れてきた。


「りっちゃん…… ごめん……」


「七星くん、ダメだよ。
 クルミちゃん以外の女の子に、優しくしたら。

 たこ焼きを食べに来てくれた時も、
 ネックレスを首にかけてくれた時も、
 本当に嬉しかったんだから。

 そんなことされたら……」


 そんなことされたら……


 もっともっと好きになっちゃうんだから……


 私を選んでほしいって、
 むなしい期待が膨らんじゃうんだから……


 でもそんな思いは、言葉にできない。


 最後はきちんと、笑顔で言わなきゃ。


 この恋を終わりにさせる、言葉を。


「くるみちゃんと付き合っているんだから、
 もう私のこと
 『りっちゃん』って呼ばないでね」


 涙はとめどなく溢れたまま。


 それでも、
 一生懸命七星くんに笑顔作ってみた。


 そして理科準備室から、
 逃げるように飛び出した。


< 106 / 281 >

この作品をシェア

pagetop