白雪姫に極甘な毒リンゴを
「七星くん……
重たい本を、
図書室に運んでくれた日のこと、覚えてる?」
「え? それって確か…… 小5くらい?」
「うん……。
その時からずっと……
七星くんのことが……
好きです……」
フラれるってわかっていたけど、
必死に笑顔を作って思いを伝えてみた。
彼女がいる人に告白するなんて、
バカみたいって自分でも思う。
でも、はっきり振ってもらわないと、
前に進めそうにないから。
いきなり、こんな私なんかに告白されて、
迷惑だったよね?
七星くんの顔を見る勇気はないけど、
この沈黙が教えてくれた。
七星くんは間違いなく
私のことなんて好きじゃないって。
告白するまえから、
100%フラれることは
わかっていたはずなのに、
思っていた以上に
心がギューっと締め付けられて、
泣きたくなんてないのに涙が溢れてきた。
「りっちゃん…… ごめん……」
「七星くん、ダメだよ。
クルミちゃん以外の女の子に、優しくしたら。
たこ焼きを食べに来てくれた時も、
ネックレスを首にかけてくれた時も、
本当に嬉しかったんだから。
そんなことされたら……」
そんなことされたら……
もっともっと好きになっちゃうんだから……
私を選んでほしいって、
むなしい期待が膨らんじゃうんだから……
でもそんな思いは、言葉にできない。
最後はきちんと、笑顔で言わなきゃ。
この恋を終わりにさせる、言葉を。
「くるみちゃんと付き合っているんだから、
もう私のこと
『りっちゃん』って呼ばないでね」
涙はとめどなく溢れたまま。
それでも、
一生懸命七星くんに笑顔作ってみた。
そして理科準備室から、
逃げるように飛び出した。