白雪姫に極甘な毒リンゴを
その後のことは、あまり覚えていない。
誰かに助けて欲しくて、
この辛さを和らげてもらいたくて、
無意識にたどり着いたのは、体育館。
ステージの上には、
女子に囲まれてお弁当をほお張る、
お兄ちゃんがいた。
なんでお兄ちゃんなんだろう……
あんな、上から目線で、
私に文句ばっかり言って、
目をつり上げて怒ったりするのに。
桃ちゃんや紫音くんなら、
優しくなぐさめてくれるって思うに。
なんで今会いたいのが、
お兄ちゃんなんだろう……
自分でもわからないよ。
体育館のドアから、顔だけ出してみたけど、
やっぱりお兄ちゃんのところには近づけない。
こんな泣きはらした目で、
綺麗なお姉さまがたをかき分けて、
お兄ちゃんのところになんか行けないもん。
それにきっと、
お兄ちゃんは怒鳴るだけだから。
「なんで、俺のところに来たんだよ!」って。
「六花?」
後ろからの予想外の声に、
肩がビクンと跳ねた。