白雪姫に極甘な毒リンゴを

 その後のことは、あまり覚えていない。


 誰かに助けて欲しくて、
 この辛さを和らげてもらいたくて、
 無意識にたどり着いたのは、体育館。


 ステージの上には、
 女子に囲まれてお弁当をほお張る、
 お兄ちゃんがいた。


 なんでお兄ちゃんなんだろう……


 あんな、上から目線で、
 私に文句ばっかり言って、
 目をつり上げて怒ったりするのに。


 桃ちゃんや紫音くんなら、
 優しくなぐさめてくれるって思うに。


 なんで今会いたいのが、
 お兄ちゃんなんだろう……


 自分でもわからないよ。


 体育館のドアから、顔だけ出してみたけど、
 やっぱりお兄ちゃんのところには近づけない。


 こんな泣きはらした目で、
 綺麗なお姉さまがたをかき分けて、
 お兄ちゃんのところになんか行けないもん。


 それにきっと、
 お兄ちゃんは怒鳴るだけだから。


「なんで、俺のところに来たんだよ!」って。



「六花?」


 後ろからの予想外の声に、
 肩がビクンと跳ねた。
< 107 / 281 >

この作品をシェア

pagetop