白雪姫に極甘な毒リンゴを

◇◇◇

 重たい瞳を、ゆっくり開けた。


 ここってどこだろう。

 
 輪郭がない、ぼやけた世界が広がている。


 ピンクの花柄のカーテン。 


 黄色い物体は、
 毎朝ピヨピヨ起こしてくれる、
 ひよこの目覚まし時計かな?


 ん? ここって? 


 私の部屋だ。



 手探りでメガネを探して、
 寝転がったままメガネをかけた。


 「ひゃ!!」


 な……なんで!!


 私の顔のすぐ横に、お兄ちゃんの顔が。


 床に座り、
 ベッドに顔を乗せて寝ているお兄ちゃん。


 あと少しでも動いたら、
 キスしちゃいそうなほどの近さに、
 ドキッとして反対に寝返りをうった。


 え~と、何があったんだっけ?

 
 思い出せ、思い出せ。


 なぜ自分の部屋のベッドに、
 私が寝ているんだっけ?


 時計の針を逆回転させるように、
 自分の記憶を巻き戻す。


 ストップ!!


 ここからだ!


 事の発端は、
 七星くんに理科準備室に呼ばれたこと。


 それから、
 七星くんに自分の思いを伝えたけど、
 玉砕して。


 なぜかお兄ちゃんに会いたくなって、
 体育館に行ったんだ。


 そしたら、紫音くんが急に現れて……


 抱きしめられて……



 それ以上は思い出せない。
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