白雪姫に極甘な毒リンゴを


 涙が枯れ果てるまで泣いた私は、
お兄ちゃんの腕からするりと抜け出した。

 
 その時、お兄ちゃんが
 急に誰かに電話をかけ始めた。


 え? 誰に?


 もしかして、七星くん??


 『六花を傷つけた恨み、覚悟~~!!』って、
 悪徳お代官様をやっつけるようなこと
 言わないよね?


 昨日見た時代劇のテレビドラマのせいで、
 変な妄想が膨らんでいると

「もしもし、一颯だけど久しぶり!」

 馴れ馴れしい口調のお兄ちゃんが、
 ビックリすることを口にした。


『春香おばさんって、
 明日の夕方時5ごろって暇?』


『良かった~ 
 それならさ、着付けとヘアメイクを
 お願いできない?』


『助かるよ~ 
 じゃあ、5時に春香おばさんの家に
 行かせるから。 六花を』


 ん? 

 
 着付けとヘアメイク?


 春香おばさんのところに行かせる? 


 六花を??


 六花って……私じゃん!!


「お……お兄ちゃん!
 もしかして私、花火大火に行くの?」


「ああ」
 

「誰と?」


「は? 俺とに決まってんじゃん!」


 いつ決めた? 

 誰が決めた?


 お兄ちゃんが今決めたのか。


 自分の質問に自分で答えを出したけど、
 全然納得なんてできないよ。


 そんな私の思いを無視するかのように、
 お兄ちゃんはだまって部屋を出て行った。



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