白雪姫に極甘な毒リンゴを
「ねえ、六花。
一颯に、甘えてみたら?」
甘える?
お兄ちゃんに?
「春ちゃん、そんなことできないよ。
お兄ちゃんに甘えたら、
『近寄るな』って、怒鳴られそうだもん」
「それは、一颯の照れ隠しじゃない?
妹なんだから、
お兄ちゃんに甘えればいいのよ。
私なんか、雪姉にさんざん甘えたわよ。
雪姉のことが好きすぎて、
背後霊のように後ろにピタッと
くっついてみたり、
ソファでテレビを見る雪姉の隣に座って、
傘をさしてみたり」
隣に座って、傘をさす?
お母さんと春ちゃんがやっているのを
想像したら、笑いがこみあげてきた。
もしかして私が心を開いたら、
お兄ちゃんも心を開いてくれる?
お母さんが亡くなる前みたいに、
優しいお兄ちゃんに戻ってくれる?
あの頃は間違いなく、
私のヒーローだったから。
お兄ちゃんが。
「わたしも、お兄ちゃんに甘えてみようかな」
私が自信な下げにつぶやいた言葉に、
春ちゃんは飛び切りの笑顔を向けてくれた。