白雪姫に極甘な毒リンゴを


 私は振り返り、しっかりと瞳で確認した。


 そこに立っていたのは、
 は~は~と息を切らしたお兄ちゃんだった。


「六花、お前な。
 急にいなくなって心配したんだからな。
 勝手に俺から離れんなよ」


「ごめんなさい」


 お兄ちゃんが、
 必死に探してくれたことは、
 兄ちゃんの表情を見ればすごくわかる。


 だから素直に謝った。


 そしてお兄ちゃんから、
 リンゴ飴を受けとると、
 私は千都くんの前に行った。


「一目惚れて言われて、
 ちょっと嬉しかったです。

 びっくりしすぎて、
 悲しかったことも忘れられました。

 付き合うことはできないけど、
 このリンゴ飴、もらってもいいですか?」


「え? あ、もちろん。
 返されても、悲しくなるし」


「本当に、毒リンゴじゃないですよね?」


「アハハ、俺、信用されてないですね」


 千都くんとは、笑ってサヨナラした。


 多分もう、会うこともない人だと思う。


 でも、初めて私に、
 告白ってことをしてくれた人。


 私の人生の中で、
 ちょっとだけ特別な人になった。

 
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