白雪姫に極甘な毒リンゴを
花火大会の直前に、
クルミちゃんと七星くんが
付き合いだしたんだ。
クルミちゃんを誘ったけど、
断られちゃったんだ!きっと。
お兄ちゃんの切なそうな表情が、
どれだけクルミちゃんを好きか物語っている。
「お兄ちゃんも、いろいろ辛いんだね。
十環先輩もだし。
うまくいかないね、恋愛って」
「お前もだろ?」
お兄ちゃんの低い声に我に返る。
はっ……
そうだった……
私の5年間の片思いも玉砕したんだった。
フッと七星くんの笑顔が
私の脳内スクリーンに映し出され、
その隣に、ツインテールを揺らす
クルミちゃんが寄り添っていた。
ダメダメ!
もう忘れることにしたんだから!
でも……
誰かに助けて欲し……
この寂しさを……
消し去ってほしい……
そっか……
春ちゃんが言ってくれたように
すればいいんだ……
私は瞳をとじて、
鼻から空気を入るだけいれた。
そしてゆっくり吐き出すと、
お兄ちゃんに向かって宣言した。
「お兄ちゃん!
今日から私、
お兄ちゃんに甘えることにしたから!」
「は~~~~~~~~~~~?」
お兄ちゃんの声が、
家じゅうに響き渡った。
きっとスヤスヤ寝ている
インコの小雪ちゃんも、
何事か?と飛び起きちゃったはず。
私は今まで心に刺さっていた
魚の骨のようなものが、
今の宣言でスポッと抜けたようにすっきりして
自分の部屋の小窓を、ぱたりと閉めた。