白雪姫に極甘な毒リンゴを
夏休みに入り、今日で1週間。
俺はもう、骸骨のように
げっそりしちゃったんだけど。
その理由が、
六花の意味不明な行動のせい。
俺はベッドに横たわり、
犬のぬいぐるみの『ごんぞう』を
ギューっと抱きしめた。
は~
家の中で安らげるのは、
自分の部屋だけだよ。
お目めは真ん丸パッチリなのに、
なぜか眉毛が異様に太いごんぞうに、
話しかけた。
「六花の奴、最近変だと思うよな?
ごんぞうもそう思うだろ?」
六花が
『お兄ちゃんに甘える』宣言をしてから、
俺は六花から逃げ回っている。
この前なんて、
リビングのソフにァ座って
サッカーの試合を見ていた時、
六花が何をしてきたと思う?
家の中なのに傘をさして、
俺の隣に座ったんだ。
そのまま、無言でサッカーを見ているし。
何をしたいのか、
俺にどうして欲しいのかが全く分からなくて、
俺はまた、自分の部屋に逃げ込んだ。
そしてまたある時は。
俺が洗面所で歯磨きをしている時、
俺の背中にピタッとくっついてきた。
おい!
それじゃ背後霊じゃん!
「六花、邪魔だからどっか行けよ!」って
俺が悪魔モードフル稼働で怒鳴ったら
『いいじゃん。
ただ、お兄ちゃんにくっつきたいだけだから』
って言って、
俺の怒鳴り声なんか無視で、くっついてくるし
そりゃ、可愛いと思うよ。
今まで俺のことを避けていた六花が、
俺のとこに来てくれるのは
嬉しいとも思うよ。
でも、アイツは俺のことを
『お兄ちゃん』としか思ってないけど、
俺は違うんだからな。
『俺だけのものにしたい』
『他の奴に取られたくない』って
思っているこの思いは、
兄弟愛じゃなくて、恋の方なんだからな。
俺は、六花から逃げ惑うのに疲れて、
バイトと図書館にこもる
夏休みを過ごすことにした。