白雪姫に極甘な毒リンゴを

 六花を抱きしめたいっていう
 俺の欲望爆発まで、10秒も持たない……


 俺の理性を保っていられる自信がほぼなくて、
 逃げ出そうとした時、
 六花がスっと立ち上がって、俺に微笑んだ。


「お兄ちゃん、
 つき合わせちゃってごめんね」


「は?」


 いきなりなんだ?


「私が甘えるの、
 嫌々付き合ってくれていたでしょ?」


 嫌々なんてとんでもない。


 俺に甘えてくれる六花は、
 可愛くてしかたがない。


 でも、これ以上甘えられると、
 兄として超えてはいけない一線を
 越えてしまいそうで怖い。


「まあな。

 で、なに? 

 もう、俺に甘えるのやめてくれるわけ?」


「うん」


 え?
 

「お兄ちゃんに甘えるのは、これでおしまい。
 もう充分、お兄ちゃんに甘えられたから」


 なんだそれ。


 本気で言ってんの?


「無理やりつき合わせちゃってごめんね。
 それと私、決めたよ。

 お兄ちゃんとバイバイする」


 は?


 言っている意味が分からない。


 決めたってなんだよ。


 俺とバイバイってどういう意味だよ。


「お兄ちゃん、私のことが嫌いでしょ?
 だから、この家を出ることに決めたの」


「は? 家を出てどうすんだよ?
 どこに住むんだよ?」


「北海道。
 春ちゃんと一緒に、北海道に行くから」


 六花はそう言うと、
 階段を駆け上がり、
 自分の部屋に入っていった。

 
 六花の言葉がショックすぎて、
 俺はソファから、
 しばらく立ち上がれなかった。


 テレビのお笑い番組の笑い声だけが、
 リビングにむなしく響き渡っていた。

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