白雪姫に極甘な毒リンゴを
「私、絶対に行かせませんから。
どんな手を使ってでも、
私がムショにぶち込まれようが、
絶対に阻止しますから。北海道行き」
「もう、桃ちゃん。
刑務所に入るなんて物騒すぎでしょ?
どうする気なの?」
十環の笑い交じりの声に、
桃ちゃんは真剣な声で答えた。
「まずは、原因の一颯先輩を抹殺します」
「桃ちゃん、そんな鋭い目で言うと、
冗談に聞こえないよ」
「冗談じゃないですよ。
この場で、一颯先輩とさしで勝負します」
俺を睨みつける桃ちゃんの瞳。
あれはマジだ。
本気で俺に殴り掛かるつもりだ。
それだけ桃ちゃんは、
六花に北海道に行ってほしくないんだな。
それって、俺と同じじゃん。
そう思ったら、
笑いがこらえられなくなった。
そして、
ケラケラと笑いが止まらなくなった。
「な……
一颯先輩、私は本気ですからね。
六花を苦しめる奴は、
それが六花の兄だろうと容赦はしません」
「待った……待った……アハハハ
ごめん、笑いが止まんねえ……アハハハ」
きょとんとした顔で見つめる桃ちゃんに、
やっと笑いが止まってくれた俺は言った。
「だよな。
六花の奴、俺が六花を嫌いって思ってるよな」
「思っていますよ」
「桃ちゃんってさ、兄弟っていないの?」
「い……いますけど……
顔も見たくないような兄が、3人」
「じゃあ、ちょっとはわかるんじゃない?」
「へ?」
「妹にはさ、
素直に言えないことがあるっていうかさ」
「わかりません。
一颯さ先輩の言っている意味が。
でも、一颯先輩も
行ってほしくないってことですか?
六花が北海道に行くこと」
俺は目を細め、おだやかに微笑んでみた。
その時、
いきなり桃ちゃんが俺に
突進してきたかと思うと、
目をキラキラさせ、
急に俺の手を両手で包み込んだ。
「じゃあ、一颯先輩も、
六花が北海道に行くことを
阻止したいってことですよね?」
「あ……まあ」
「じゃあ、私に協力してくれますよね」
「う……うん」
内容次第だけど。
「手伝ってください」
だから、何を?
「紫音くんと七星くんのどっちでもいいから、
六花とくっつくように」