白雪姫に極甘な毒リンゴを

「六花にさ、お願いがあるんだけど」

「ん?

 また、お兄ちゃんのバイト姿を
 見に行きたいとか?」


 何も答えない紫音くんだけど、
 紫音くんの瞳が、そんなことじゃないって
 ものがたっていた。


「今度の土曜日にさ……見に来てくれない?
 俺が出る、バスケの練習試合」


 バスケの練習試合を……

 見に来てほしい??


 え……と……

 なんで私に、見に来てほしいんだろう……


「六花さ、俺のバスケ姿見るの、イヤ?」


 目の前の紫音くんは、
 悲しそうな瞳で私を見つめている。


「嫌じゃないよ!
 そういうわけじゃなくて……

 練習試合とかって見に行ったことがなくて……
 一人じゃ不安というか……」
 

「そっか……そうだよね……」


 紫音くんは立ち上がると、
 私から一番遠い席に向かって歩き出した。


 桃ちゃんに何か話しかけている。


 何を話しているんだろうと、
 私も二人のところに駆け寄った。


「だからさ、百目さんも見に来てくれるよね。
 俺の試合。
 俺に協力してくれるって言ったよね」


 桃ちゃん、いつの間にか
 紫音くんに弱みでも握られた?


 目の前の桃ちゃんは、
 バスケの練習試合なんて
 絶対に行きたくないって顔をしている。


「紫音くん、
 無理やり桃ちゃんを誘わないでよ。

 桃ちゃんは、
 おうちのお手伝いとかあって
 土日も忙しいんだから。

 ね、桃ちゃん」


「行くわよ……」


「え?」


「何時から始まるわけ? その試合は」


 行きたくありませんって、
 桃ちゃんの顔に書いてあるのに、
 やっぱり行くなんて、どうしたんだろう?


「10時から。
 うちの学校の体育館でやるから。

 六花、百目さんが一緒なら
 来てくれるんだよな?」


「う……うん」


 そういうわけで、
 今度の土曜日は桃ちゃんと一緒に、
 紫音くんのバスケの試合を
 見に行くことになりました。


 あ……

 久しぶりに桃ちゃんと二人だけで
 お話しできるかも。


 紫音くんに感謝しなくちゃ。

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