白雪姫に極甘な毒リンゴを
「六花、クルミ、おはよ」
「桃ちゃん……おはよ……」
「六花、
昨日は話を聞いてあげられなくてごめんね。
今日ね、お母さんに頼んで
バイト休ませてもらったんだ。
だからさ、学校が終わったら
クレープ食べに行かない?」
桃ちゃんが、
学校帰りに誘ってくれることなんて初めてで
嬉しいはずなのに、
どうしても笑顔で『うん』って
返事ができない。
「クルミも行きたいよ~」
「六花、いいよね? 3人でも」
やっぱりクルミちゃんもだよね。
でも、私が話したいことは
桃ちゃんにだけ聞いてほしくて、
クレープだって、
桃ちゃんと二人だけで食べたい。
そう思った瞬間、
自分のことが大嫌いになった。
私って……
性格悪すぎ……
「桃ちゃん、クルミちゃんごめんね。
わ……私……今日は予定があるから」
今、私が顔をあげたら、
きっとひどい顔をしているはず。
桃ちゃんとクルミちゃんの
仲がいいことに嫉妬して、
私の隣にいるのは桃ちゃんだけだった、
数日前に戻してほしいって思いが、
顔に出ちゃっていると思う。
桃ちゃんにこんな顔を見られたら、
私に嫌気がさすんじゃないかっていうくらい、
醜い顔をしているはず。
「ちょっと……トイレに行ってくるね」
惨めな顔を見られたくなくて、
私はトイレに逃げ込むと、
授業が始まるぎりぎりまで、
一人ぼっちの空間に隠れていた。