白雪姫に極甘な毒リンゴを

 私が返事に困っているってことが
 バレバレだよね。
 

「六花、見ていて」


「え?」


 紫音くんは、バスケットボールを持つと、
 2階の観客席から、
 バスケのゴールに向かってボールを放った。


 そのボールは、
 まるで何かに導かれたように、
 綺麗な弧を描いて
 バスケットゴールに入った。


「す……すごい……」


「さすがに俺も、入るか不安だったわ。

 こんだけカッコつけて外したら、
 恥ずかしすぎだし。俺」

 
 照れ隠しみたいな笑顔を
 私に向けた紫音くん。

 
 ちょっと恥ずかしそうに微笑む紫音くんが
 かわいくて、
 私の心がキュンって音を立てた。


「六花、俺のこと、嫌い?」


 嫌いじゃ……ない……


 私はうつむきながら、
 ゆっくりと顔を左右に振った。


「ならいいや。

 これから時間をかけて、
 俺のこと好きにさせるから。

 六花、覚悟しとけよ」


 そう言ってほほ笑んだ紫音くん。


 今まで見た中で、
 一番さわやかで優しい笑顔だった。
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