白雪姫に極甘な毒リンゴを
バスケの練習試合後に告白された日から、
お昼休みになると
私の教室に来るようになった紫音くん。
空いている椅子を勝手に借りて、
私の机の前に座り込んで、
おしゃべりしてくれる。
お姉さんや、飼い犬のワンコの
愚痴の時もあれば、
お兄ちゃんのことを聞いてくる時も。
たった5分ほどで、
友達とお弁当を食べてバスケをやるために、
教室に帰って行っちゃうけど。
今日も、午前中の授業が終わったチャイムが
鳴り終わると同時に、私の教室に入ってきた。
今日は、何の話かな?
お姉ちゃんのことかな?
そんなことを思っていたのに、
笑顔を全く見せず、
いつもと何か違っていた。
「紫音くん、何かあった?」
「ん?
え……と……」
どうしたんだろう……
何か嫌なことでも、あったのかな?
私が心配そうに見つめると、
紫音くんは机に顔を伏せた。
「六花さ……
返事……まだだよね?」
ひゃ!
へ……返事??
それって、
付き合ってっていうことへのお返事だよね。
「そ……それは……」
どうしよう……
1年でバスケ部のレギュラーで、
女の子にキャーキャー言われる
こんなイケメンくんが、
私のことを好きになってくれることなんて
この先、一生ないと思う。
今もまだ、
夢なんじゃないかって思っちゃう。
でも……
紫音くんと付き合うことを考える
いつも心の中の分厚い氷に覆われた何かが、
キーンと響くのを感じる。
この違和感。
なんなんだろう……
私が難しい顔をしていたことに
気づいたみたいで、
紫音くんは、急に明るい声を発した。