白雪姫に極甘な毒リンゴを


 え? なんで?なんで?

 なんで七星くんが、私の家に?


 それよりもまず、
 『私がいない』なんて嘘をついた
 お兄ちゃんが許せない。


 私はお兄ちゃんの腕を引っ張って、
 七星くんから見えない
 階段下まで連れてきた。


「お兄ちゃん、なんで嘘をついたの?」


「は?
 あいつは弁当箱を届けに来ただけだろ。
 俺が受け取っておけばいいだけだし」


 「もう、お兄ちゃんは
 自分の部屋に行っていて」


 私はお兄ちゃんの背中を力いっぱい押して、
 何とか2階に追いやった。


「ご……ごめんね……七星……くん」


「俺も連絡とかしないで、
 来ちゃったから」


 お兄ちゃんにひどい態度をとられたのに、
 全く気にしていないような、 
 さわやかな笑顔の七星くん。


 それなのに私はと言うと、
 七星くんの前だと緊張しちゃって、
 うまく話せない。

 
「赤城さん、たこ焼きありがとね。
 俺の好きな味だったから、
 気づいたら全部食べちゃったよ」


「ほ……本当?」


「うん。
 赤城さんの焼いてくれたたこ焼きなら、
 100個くらい食べれるかも」


「ひゃ……100個??」



「アハハごめん、ごめん。言い過ぎだった。
 50個は食べれるかな」


 七星くんが、
 白い歯を見せながら優しく笑ったから、
 私もつい、笑みがこぼれてしまった。


 あ!まずい……


 私なんかが笑ったら、
 気持ち悪がられちゃう……


 私はとっさに、
 口元を手のひらで隠してうつむいた。


「よかった。
 赤城さん、やっと笑ってくれて」


「え?」


「いつもうつむいているから、
 俺のこと嫌いなのかと思った」


 き……嫌い?


 私が七星くんのことを?


 そんなはずないよ。

 私は……私は……
< 18 / 281 >

この作品をシェア

pagetop