白雪姫に極甘な毒リンゴを
溢れる想い
☆一颯side☆
自分の部屋の机に座り、
受験必勝テキストとにらめっこをしていると
六花の泣き声が、かすかに俺の耳に届いた。
六花、どうしたんだよ。
俺の部屋に届くぐらい泣くって、
よっぽどのことがあったんだろうな。
今までも、
こういうことは何度もあった。
すぐに行って、六花を慰めてやりたい。
優しく包んでやりたい。
そう思いながら、
突っ走りそうな自分の思いを
無理やり閉じ込め、
六花に何もしてやれない自分に
ムカついたことが何度も、何度も。
でも、
桃ちゃんと約束をしちゃったからな。
六花に、悪魔みたいにきつく接するって。
七星か紫音と六花がくっつけば、
北海道行きをやめてくれるからって。
俺はどうしたらいい?
今まで通り、
六花への思いを心の奥に閉じ込めて、
自分の気持ちに嘘をつき続ければいい?
六花の前から姿を消せばいい?
それとも……
俺の気持ちを……伝えればいい?
ずっと六花のことが、
好きでしかたがなかったって。
は~
俺の思いなんて、
一生伝えちゃダメだよな。
それが亡くなった母さんとの、約束だし。
一生切ることのできない
『兄』と『妹』との関係が壊れて、
取り返しのつかないことになって
しまうからな。
俺は一生、
六花の兄として生きていくしかないんだ。
それなら、
兄として六花を励ましてあげればいい。
兄としてできることを、
六花にしてあげればいい。
そう思った時には、
六花の部屋に足が向かっていた。