白雪姫に極甘な毒リンゴを
「お前さ、
子供の頃から好きだったんじゃねえの?
七星のこと」
「……好きだったよ」
「じゃあ、断る理由ってなくねぇ?」
涙がひいた六花は、
難しそうな表情でぼそりと言った。
「嫌だったから……」
「何がだよ」
「七星くんはいつも、
クルミちゃんと去っていくから。
私が行かないでって思っても……
いつも……」
「でも、クルミより
六花が良いって言ってくれたんだろ?」
六花はうつむきながら、
こくりとうなずいた。
「じゃあ、いいじゃん」
「お兄ちゃんだったら、どうする?」
「は?」
「好きな子が目の前にいても、
平気でほかの女の子といなくなっちう?」
「俺は……」
俺は、なんて答えればいい?
『六花さえいてくれれば、
ほかの女はこの世から消えても構わない』
って、俺の本当の気持ちを伝えればいい?
それとも
『俺は、彼女ができてもが、
ほかの女とも遊びたい』って、
六花に嫌われるような嘘をつけばいい?
俺が答えに困っていると、
六花が大きな瞳を伏せながら、
ぼそりと言った。
「お兄ちゃんは……
そんなことしないか」
え?
「だってお兄ちゃん……
クルミちゃんに一途だもんね」
なんで、クルミが出てくんだよ。
もしかして本気で、
俺がクルミのことを好きって
勘違いしているのか?
「あいつとは……別に……」
「あ、でも、
相変わらずお昼は
女子たちに囲まれて食べているでしょ。
そんなことしていると、
クルミちゃんに嫌われちゃうよ」
俺だって、
好きで女子たちに
付き合ってるわけじゃねえんだよ。
できることなら俺の前から、
女子が全員消えてくれてかまわない。
でも、
俺がこの学園にいるための条件だからな。
女子たちと、もめ事を起こさないことが。