白雪姫に極甘な毒リンゴを

「俺さ、クルミと付き合ってないけど」


 六花の瞳が、
 だんだんとビー玉のように
 まん丸に開いていき、
 開ききったところで、俺の腕をつかんできた。


「え? 
 で、でも、クルミちゃんのことが、
 好きなんだよね?」


「俺、クルミが良いなんて思ったこと、
 一度もねえし。

 なんでそうなるわけ?」


「だ……だって……
 私の誕生日会で、
 クルミちゃんが家に来た後から、
 急にお兄ちゃんが優しくなったから」


「別に……
 六花に優しくなんてなってねえし」


「それに、
 好きな子を花火大会に誘ったって
 言ってたじゃん。

 でも、一緒に行ってもらえなかったでしょ?

 あれって、花火大会の直前から、
 クルミちゃんが七星くんと
 付き合いだしたからだと……」


 なんだよ、その、勝手な勘違い。


 俺と何年一緒に暮らしてきてんだよ。


 クルミが俺の好みじゃないってことくらい、
 わかれよ!


 ってか、逆に気づけよ!


 俺がお前のこと、どれだけ好きかって!


 そのとき、
 六花への思いを封じ込めたリミッターを
 はずす言葉を、六花が口にした。
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