白雪姫に極甘な毒リンゴを
もしかしてこれが……
お兄ちゃんロス?
お兄ちゃんが出て行って1週間が経った頃、
突然襲ってきた寂しさに、
唇をギュッとかみしめた。
なぜだかわからない。
でも、
無性にお兄ちゃんに会いたくてしかたがない。
リビングのソファに座って、
家の中をぐるりと見まわすと、
お兄ちゃんとの思い出ばっかりが隠れていて、
涙が出そうになった。
夏休み。
お兄ちゃんに甘えてみたんだっけ。
お兄ちゃんがソファに座ったら、
私も隣に座ってみたり。
お兄ちゃんが移動したら、
背後霊のように背中に
ピタッとくっついてみたり。
隣にいてくれるだけで、すっごく癒された。
あの頃に戻りたいな。
でも……
私はお兄ちゃんのこと……
やっぱりお兄ちゃんとしてしか見られないよ。
だって、2歳の時からずっと
『兄』と『妹』だったんだよ。
ちょっと前までは、
悪魔みたいに怖いお兄ちゃんのことが、
嫌いでしょうがなかったし、
お兄ちゃんに恋愛感情なんて、
芽生えたこともなかった。
それに、お兄ちゃんと付き合ったら、
周りから変な目で見られちゃうもん。
いくら血がつながってないからって、
兄弟なのに付き合うとかありえないし。
「甘えさせてくれる、
優しいお兄ちゃんでいてくれないかな……」
つい、心の声がもれてしまった。
でも、
この家には誰もいないから問題ないか。
仕事で忙しいお父さんは、
お兄ちゃんが出て行ってから、
朝ごはんの時しか会わないし。
寂しいな……
この家に、一人は寂しいよ……
お兄ちゃん……
お兄ちゃんに……会いたいな……。
心の中でそう思った時には、
家の鍵だけを持って、
玄関を飛び出していた。