白雪姫に極甘な毒リンゴを
七星くんが帰ったあと、
私は階段を駆け上がって、
自分の部屋のベッドに倒れこんだ。
信じられない……
七星くんが私のことを
『りっちゃん』って呼んでくるなんて……
小学校の頃みたいに……
私は机の引き出しから、
ドット柄のお守りを取り出し、
こすりながら七星くんとのことを
思い出していた。
あれは…… 小学校1年生の時……
私のお母さんが亡くなって……
2週間後のこと……
あの頃は、
お母さんが突然いなくなったことを
受け止められなくて、
毎日泣いてばかりだった。
それに、お兄ちゃんに言われた言葉が、
胸に突き刺さっていた。
だから、学校に行っても
笑うことなんてできなかったし、
誰とも話したくなかった。
そんな時
『りっちゃん、これ』
七星くんが、
何かが入った封筒を、私に手渡した。
『僕に何かできること、ある?』
『え?』
『また、
りっちゃんの笑った顔、見たいな』
そう言って、
無邪気に笑った七星くんの顔が、
今でも忘れられない。
その時に渡された封筒の中に
入っていたのが、
この白地に黒いドット柄のお守り。
いかにも子供が作りましたって感じで、
縫い目がガタガタだけど、
心を込めて作ってくれたのがすごくわかる。
それからも七星くんの周りには
女の子がたくさんいて、
おとなしめの私は、
話しに行ったりはできなかったけど、
目が合うと、優しく笑ってくれた。
そして、小学5年生の時、
ある出来事がきっかけで、
私は七星君を好きになった。