白雪姫に極甘な毒リンゴを
ピヨピヨピヨ
いつものように、
ひよこちゃん時計が朝を教えてくれた。
さあ、お兄ちゃんのために、
おいしい朝ごはん&お弁当を作るぞ!
すっきり目が覚めて、
張り切ってキッチンに向かった。
朝ごはんとお弁当を作り終え、
ふと時計を見る。
え?
もう7時10分?
お兄ちゃん、
まだ起きてこないけど大丈夫かな?
このままだと、学校に遅刻しちゃうよ。
階段をドタドタと降りてくる足音が響いて、
一瞬安堵したのもつかの間
「りっちゃん、おはよ」
そう言って、
ぴんぴんにはねた髪をかき分けていたのは、
お父さんだった。
「お兄ちゃん、
まだ起きてこないけど間に合うのかな?」
「え?
あ……
一颯なら、もう学校に行ったぞ」
「え?」
そんな……
だって、私が起きたのは6時だよ。
それよりも前に、
もう学校に行っちゃったってこと?
『そんなに早く行く理由ある?』と
怪訝な表情を浮かべた私に
気づいたお父さん。
「一颯な、今日から高校の寮に入るだろ。
だから、手続きとか準備とか
あるんじゃないのか?」
お父さんはそう告げると、
逃げ込むように洗面所に入っていった。
お兄ちゃん……
私に一言くらい声をかけてから、
学校に行ってくれてもよかったのに。
それに私だって、
お兄ちゃんに言いたいことがあったんだから。
でも、学校に行けば
お兄ちゃんに会えるんだもん。
お弁当を届けた時に伝えればいいよね。
『昨日は傍にいてくれて、ありがとう』って