白雪姫に極甘な毒リンゴを
入って真っ先に思ったこと。
それは、
お兄ちゃんがこの部屋を使っていた形跡が
ほとんどないということ。
ソファやテレビ、ベッドなどは置いてある。
でも、それ以外物が全くない。
私は何かにとりつかれたかのように、
無意識にお兄ちゃんの机の
引き出しを開けた。
ひとつ残らず、
すべての引き出しを開けてみた。
どの引き出しにも、
ホコリすら残されていない。
空っぽだった。
私の心が、
淋しさでぎゅーっと締め付けられる。
もしかしたら、
クローゼットに物を
全部しまい込んであるのかも。
かすかな期待を胸に、
今度はクローゼットの前に。
お兄ちゃんが
新しい高校の寮にいるのは3月まで。
だから夏物の私服などは
このクローゼット中にしまってあるはず。
良いほうに考えて、
自分を奮い立たせてなんとか
クローゼットのドアを開けた。
え?
これ……だけ……?
クローゼットには、
お兄ちゃんが昨日まで着ていた
高校の制服と赤いベストが掛けてあり、
赤と青の箱が置かれているだけだった。
このクローゼットを見ていると、
悲しさが込み上げてくる。
だって、
『もうこの家に帰る気なんかない』って、
お兄ちゃんが訴えているみたいで。
私は十環さんに言われた通り、
箱を開けてみることにした。