白雪姫に極甘な毒リンゴを

 青い箱に入っている9個のお守りの中から、
 一番大きいお守りを手に取った。


 白地に、
 『お守り』という文字の刺繍がされている。


 その刺繍の完璧さにうっとりして、
 文字を指で撫でたとき、

 『このボコッとした膨らみ、何だろう』

 お守りの中に
 何か入っていることに気が付いた。


 お守りのひもを緩め、
 中に入っているものを取り出してみる。


 そこには、
 おみくじサイズの白い紙が入っていた。


 ジャバラ折りの紙を、
 ゆっくりと広げた瞬間、
 体中の鳥肌が立つほど、
 つま先から頭の先まで駆け上がるように、
 体中に電気が走った。


 『16歳おめでとう 

  六花がこの1年、幸せでありますように』


 流れるような達筆な文字。


 間違いない。


 お兄ちゃんの文字。


 その文字を見つめ、
 どれくらい固まっていただろう。


 インコの小雪がささやいた声が耳に届いて、
 金縛りのように固まっていた私の体が、
 一瞬でほどかれた。


 その瞬間、もしかしてと思い、
 七星くんがくれたお守りの中を確認した。


 今まで気づかなかった。


 この中には、2枚の紙が入っていた。


 1枚は……

 駄菓子の当たり券。

 
 多分、10円ガムか何かだと思う。



 そしてもう1枚は、
 折りたたまれた赤い紙。


 今まで私の知らなかったことが
 隠されていそうで、
 見たいような見るのが怖いような気持が、 
 私の心臓を猛スピードではねさせている。


 そんなドキドキの息苦しさを何とかごまかし、
 私は赤い紙をゆっくり開いた。



 『兄ちゃんが、六花を守ってやる』



 おにい……ちゃん……?


 このお守りは、七星くんじゃなくて
 お兄ちゃんが作ってくれたものなの?


 そ……そんなはずは……


 だって確かに、七星くんが渡してくれたよ。


 小1のあの時に……


 知りたい。
 本当のことを知りたい。


 そう思った瞬間、
 私はずっと大切にしてきたお守りを握りしめて、
 階段を駆け下りていた。

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