白雪姫に極甘な毒リンゴを
「もとはと言えばさ、一颯が悪いよ。
りっちゃんがせっかく作ってくれたのに、
お昼にたこ焼きを食べないから」
ああ~ そうだよ!
十環の言う通りだよ!
でも、思い出させないでくれよ。
あれは俺の、
想定外の出来事だったんだから。
まさか、
今まで何のアクションもしてこなかった
恋に奥手の七星が、
たこ焼きをパクリと食べにくるなんて、
思わないじゃん。
しかも、
俺の家にまで乗り込んでくるなんて……
俺は亀みたいに、
布団から頭だけをひょこりと出した。
「俺だってさ、後悔してんだよ。
たこ焼きくらい食べとけばよかったって」
「じゃあなんで、
一颯はお弁当をわざと家に忘れてったの?
野菜が嫌いなくせに、
りっちゃんの作るご飯は、
絶対に残さないって言っていたじゃん。」
「……朝……六花がさ……
七星が小さく映ってる写真を見て……
笑ってたから……」
俺が学校に行こうと、
六花の部屋の前を通った時、
花びらが開いたような、
優しい顔で微笑んだ六花の視線の先に、
七星の顔が見えたとたん、
怒りがこみあげてきて、抑えきれなくなった。
だから……
今日は六花の作った弁当なんて
食べてやんないって、
子供みたいにすねていた。
俺ってダサすぎ……
これってただの、嫉妬じゃん……
「そんなにりっちゃのことが好きなら、
イジメなきゃいいじゃん。
女の子に意地悪する一颯の気持ち、
俺には理解できないな~」
俺にもわかんねえよ。
女の子なら誰にでも優しくする、
ピンク王子の気持ちが。
でも俺と十環は、
180度違うようで、
実は同じような心の病を抱えている。
だからこいつには、
俺の気持ちをわかってもらいたいと
思ってしまう。