白雪姫に極甘な毒リンゴを
次の日の朝。
今日はクリスマス当日。
高校は今日から冬休み。
私は朝からケーキを焼いて、
たこ焼きを焼いた。
だって、
お兄ちゃんに食べてもらいたいから。
『おいしいよ』って微笑むお兄ちゃんの顔が、
どうしても見たいから。
そして、お兄ちゃんに
『かわいい』って言ってもらえるように、
慣れないメイクをして、
サンタさんが今朝、枕元に置いてくれた
真っ白なコートに
キャメル色のロングブーツを合わせた。
お兄ちゃんの住んでいる寮は、
私の家の最寄り駅から電車で1時間。
駅に着くと、
紫音くんが描いてくれた地図を片手に、
なんとか目的地にたどり着いた。
ここが、
お兄ちゃんの住んでいる高校の寮なんだ。
一見、大きめの家って感じ。
お兄ちゃん、出てきてくれるかな。
もうお昼の12時半だし、
出かけているかな。
体を震えさせるような、
冷え切った風が吹いていて、
耳が寒さで痛いと訴えている。
手袋とマフラーくらい、
つけて来ればよかったな。
そんなことを思いながら、
少し離れたところから寮を見つめていると、
紺のシンプルなコートに、
紅色のマフラーをまいたお兄ちゃんが出てきた
あ……
お兄ちゃんだ……
2か月以上ぶりにみるお兄ちゃん。
ずっと会いたくて、
会いたくてしかたがなかったはずなのに、
会えるチャンスが訪れた瞬間、
体が金縛りにあったように動かなくなった。
どうしよう……
このままだと、
お兄ちゃんが行っちゃうよ!!
自分の頭にげんこつを当て、
『えい! えい! えい!』と
3回叩きながら自分を鼓舞。
このチャンスを逃したら、
また、お兄ちゃんに会えなくなっちゃう!
それは絶対に嫌だもん!
そう思った時には、
お兄ちゃんのもとに駆け寄っていた。