白雪姫に極甘な毒リンゴを


「だって、しょうがないじゃん。

 紫音くんよりも七星くんよりも

 お兄ちゃんに傍にいて欲しいって
 思っちゃったんだから」


「……え?」


「もう、あの家にいるのは辛いの。

 お兄ちゃんとの思い出が詰まった
 あの家にいると、
 お兄ちゃんに会いたくて、会いたくて、
 苦しくなるの。

 妹としてじゃないよ。
 お兄ちゃんを好きって思いは。

 だから……

 私のところに……

 帰ってきて……欲しい……」



 こらえきれなくなった思いを
 吐き出したとたん、
 ぷつんと糸が切れる音がして、
 涙が一気にあふれ出した。


 潤んだ視界でお兄ちゃんを見上げると、
 苦しそうな表情をしていた。


 困らせるつもりじゃなかった。


 ただ、
 『お兄ちゃんが好き』っていう気持ちを、
 伝えたかっただけだった。


 お兄ちゃんはかすれた声で、静かに言った。
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