白雪姫に極甘な毒リンゴを
☆一颯side☆
六花が帰ったあと、
茜と点灯されたクリスマスツリーを
見に行ったけど、
俺、うまく笑えていたかな?
茜を家まで送り届けて、
寮の自分の部屋のベッドに寝転がった。
枕元に置いてあった犬のぬいぐるみの
『ごんぞう』を抱きしめながら、
六花のことを思い出していた。
なんで俺に、会いに来るんだよ!
俺が必死に、
六花のことを忘れようとしているのに。
こいつなら本気で好きになれると思って、
茜と付き合い始めたのに……
これ以上俺の心を、かき乱すんじゃねえよ。
放っておいてくれよ。
苦しい。 苦しい。
学校から寮に戻って、
一人になる時間が毎日苦しい。
この部屋に閉じこもったとたん、
真っ先にの脳裏に浮かぶのは六花の笑顔。
毎日、毎日、
六花のことを忘れさせてくれ!って
願いし続けてきたけど、
14年も一緒に暮らしてきたんだ。
そんな簡単に、
天使のような六花の笑顔なんて、
俺の頭から消えてくれないよ。
最近やっと、
茜と一緒の時は、六花のことを忘れられる。
このまま時がたてば、
茜が唯一の大事な女になって、
六花なんて忘れられる日が来るって
思っていたのに。
なんであんなことを言うんだよ。
『妹としてじゃないよ。
お兄ちゃんを好きって思いは』なんて……
あ~ もう!!
今の俺……
誰かに助けて欲しいかも……
そんな時に頼れる人は……
あいつしかいないか……
俺はスマホを握りしめると、
俺のことを唯一わかってくれる十環に、
電話を掛けた。