白雪姫に極甘な毒リンゴを

「俺が結愛さんと別れた理由、
 結愛さんが東京に行くって
 言いだしたからじゃないんだ」


「は?」


「結愛さんのお父さんに俺の過去がばれて、
 別れるしかなかった。

 しょうがないと思うよ。

 一颯が知っての通り、
 中学の時の俺、荒れていたからね」


「でも、あれは……」


「結愛さんのことが
 嫌いになって別れていたら、
 もっと早くに忘れられたのかもしれない。

 でも、好きって思いが
 俺の中に残ったままだから、
 今も忘れられないんだと思う。

 ま、
 結愛さんももうすぐ結婚するみたいだし、
 どうしようもないんだけどね。

 一颯には、
 大好きな人への気持ちを
 引きずるような思いはして欲しくないな。

 経験者の俺が断言するよ。 

 結構つらいからね」


「十環……」


「一颯の好きにしなって
 伝えようと思っていたのに、
 結局、口出ししすぎちゃったね。

 ま、一颯が幸せになってくれれば、
 誰を選ぼうと良いんだけどね」


「お前に電話して良かったよ。
 ありがとな、十環」


 十環と電話で話す前と変わらず、
 俺はどうすればいいかわからない
 モヤモヤした状態。


 でも十環と話して、
 心に乗っていた重りが、
 少し軽くなった気がする。
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