白雪姫に極甘な毒リンゴを
毒リンゴ
☆六花side☆

 クリスマス……

 終わっちゃったな……



 お兄ちゃんに会いに行ったのは、昨日のこと。


 お兄ちゃんに気持ちを伝えたけど、
 もう手遅れ。


 だってお兄ちゃんの隣には、
 あんなに素敵な彼女さんがいるんだから。


 優しくて、
 私でもドキッとするくらい
 笑顔が輝いている茜さん。


 私みたいな、
 自分のことだけで精いっぱいな
 お子ちゃまとは違って、
 自分の意志をしっかり持っている。


 茜さんと比べたところで、
 私が勝てそうなところは一つもない。


 モデルみたいにスタイルもよくて、
 ハーフ並みに、目鼻立ちもはっきりしていて。


 そんな美人なのに、
 自分のことより人の心配をしちゃうなんて、
 性格まで美人で。


 私が唯一勝てるところと言えば、
 お兄ちゃんと一緒に過ごした時間くらいかな。


 そんなの、なんの武器にもならない。


 は~


 この家とも、もうすぐお別れだ。


 せめて家じゅうの大掃除をして、
 ピカピカにしてから北海道に行こう。


 それから私は、
 家じゅうの窓掃除にとりかかった。


 真っ白なダウンジャケットの上から、
 真っ赤なマフラーを首にグルグル巻いて。


 着ぶくれした
 ダサダサ雪だるまみたいになっちゃったけど、
 これで、防寒対策はバッチリ!


 自信満々で玄関のドアを開けたのに、
 体の芯から凍り付くような冷たい風が
 ビューっと吹いた。


 さ……寒い……


 今すぐ家の中に入って、
 リビングのコタツでぬくぬくしたい。


 でも、大掃除をしなくちゃ!


 家じゅうピカピカにしたら、
 おせち料理も作って、
 北海道に行く準備も始めなきゃいけないから。


 やらなきゃいけないことだらけだから。
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