白雪姫に極甘な毒リンゴを

 キャ~!!


 わ……私……


 お兄ちゃんに
 お姫様抱っこされているんですけど……



 再びお兄ちゃんの顔を見つめると、
 耳まで真っ赤になったお兄ちゃんが、
 恥ずかしそうに私から目をそらしていた。


「六花……そろそろ降りろよ」


「あっ……うん……」


 さっきまで体の芯から凍えていたのに、
 恥ずかしくて、
 体中に熱を帯びていくのがわかる。


 きっと私、茹でだこみたいに
 真っ赤な顔をしているよ……


 私はお兄ちゃんからの腕から降りると、
 「ありがとう」と、
 うつむきながらボソリとお礼を言った。


 お兄ちゃん、
 どうして家に帰ってきたんだろう……


 その時


「たこ焼きとケーキ……おいしかった」


 やっと私の耳に届くぐらいの、
 お兄ちゃんの声。


 え? 


 お兄ちゃん、
 たこ焼きもケーキも食べてくれたの?。


「大丈夫だった? 

 ケーキ、甘すぎじゃなかった?」


「俺の好きな味だった。
 極甘なお菓子とか、結構好きだし」


「それで、今日はなんで帰ってきたの?

 何か取りに来たの?

 すぐに……帰っちゃうんだよね?」


 お兄ちゃんが家に帰ってきてくれたのは、
 飛び跳ねたいほど嬉しい。


 だって、ずっと待っていたから。


 今日こそは、帰ってきてくれるかなって。


 でも、いつも、期待をしてしまった分、
 布団に入ると辛くなる。


 やっぱり今日も、
 お兄ちゃんは帰ってこなかったなって。


 だから期待なんかしちゃダメ!


 お兄ちゃんが帰ってきたことを
 喜んじゃダメ!


 そうしないと、
 お兄ちゃんの背中を見送る時に、
 苦しくなっちゃうから。


「今日は六花に、言いたいことがあってきた」


 え? 


 私に言いたいこと?


 それって、
 また昨日みたいに言われちゃうのかな?


 『茜が好きだから、俺に会いに来るな』って、
 怒られちゃうのかな?


 そう思ったら、
 うまく息ができないほど、
 心臓が苦しくなった。
< 250 / 281 >

この作品をシェア

pagetop