白雪姫に極甘な毒リンゴを


「これさ、毒リンゴな?」


 え? 


 ど……毒リンゴ??


 いきなり……なに??


「お兄ちゃん……
 なんでこれが……毒リンゴなの?」


 目の前のリンゴよりも
 真っ赤になったお兄ちゃんの頬。


 それを手で隠しながら、
 お兄ちゃんが言った。


「六花への14年間分の思い……

 このリンゴに……

 詰め込んであるから……」



 ひゃ~


 ますます赤みが増した
 お兄ちゃんを見ていると、
 私まで、ほっぺが火照っちゃうよ。


 私まで恥ずかしさでドキドキしていると、
 さらにドキドキさせるような言葉を
 お兄ちゃんが言った。


「俺の毒で侵されたこのリンゴを食べたら、
 もう一生、六花のことを離さないけど、
 どうする?」


 その言葉を聞いたとたん、
 超高速で飛び跳ねだした心臓。


 心臓が、そのまま動き出して
 どっかに行っちゃいそうだよ。


 体中の血液も沸騰しそうなほど
 熱くなっているし。


 う……嬉しい……。


 私は嬉しさで震えだした体を
 落ち着かせるように大きく息を吸うと、
 体中の空気を追い出すように
 ゆっくりと息を吐いた。


 そしてお兄ちゃんの目を見つめ、
 リンゴを受け取ると、
 歯を見せるくらい、
 とびきりの笑顔をして見せた。


「毒リンゴ……

 食べたい……」


 私が言い終わってうつむいていると、
 視界がいきなり暗くなった。


 抱きしめられている……


 ん?  


 だれ?
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