白雪姫に極甘な毒リンゴを

「りっちゃ~ん!!」


 ヒックヒック泣きながら
 私を抱きしめていたのは、
 お兄ちゃんではなく、お父さんだった。


「お……おとうさん? 

 え? え?」


 この状況がわからなくて、
 お父さんの腕の中でじたばたもがく。


 でも、絶対に私を離さないっていうくらい、
 強い力でお父さんの腕に抱きしめられている。


「親父、いつからいたんだよ」


「……一颯が、
 極甘なお菓子が好きって言ったあたり」


 そ……それって……


 ほとんど最初から、
 お兄ちゃんとの会話を聞かれていたってこと?


 お兄ちゃんは
 深くため息をつきながら言った。


「親父……放してやれよ。六花のこと」


「だ……だって……
 りっちゃんが…… 
 りっちゃんが……」


「苦しがっているぞ。 六花が」


 お兄ちゃんの言葉を聞いてハッとしたように、
 お父さんの腕が急にほどけた。


 涙をぼろぼろこぼしたお父さんは、
 両手で涙を拭きながら、お兄ちゃんの前に。


 お父さん、
 私とお兄ちゃんが付き合うことを
 大反対していたんだよね?


 どうしよう……


 いきなりお兄ちゃんを、
 殴りだしちゃったら。


 私は慌ててお父さんの前に行った。


「お父さん、聞いて。

 私ね……」


「一颯、悪かったな」


 え?


 お父さんがお兄ちゃんに、謝った?
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