白雪姫に極甘な毒リンゴを


「お前がそんなに、
 りっちゃんのことを真剣に思っていると
 思わなかった。

 俺だって、すっげー悩んだんだよ。

 もし一颯とりっちゃんが
 付き合うことになって、 
 その後別れでもしたら、
 家族の関係が壊れちゃうんじゃないかって。

 そう思ったら、
 兄と妹のままが一番いいんじゃないかって」


「親父……」


「でもさ、家を出る前にお前が言ったよな。

 雪ちゃんと血のつながってない妹だったら、
 好きにならないのか?って。

 どんなに考えても、
 俺も無理だって思った。

 義理の妹だったとしても、
 俺は雪ちゃんを選んでいたと思う」


「じゃあ、俺が六花と付き合うこと、
 許してくれるのか?」


「ああ。 

 お前たちの人生だ。 
 俺がとやかく言うのもおかしいからな。

 その代わり、
 りっちゃんを絶対に幸せにするんだぞ」


「わかってるよ。
 俺さ、親父が母さんを好きな気持ちより、
 六花が大好きって自信があるから」


「一颯、お前、生意気だな。

 俺に勝てるわけないだろ?

 雪ちゃんへの思いの深さは、
 海の底よりも深いからな」


「俺のほうが勝ったね。

 俺なんて、地球を掘って掘って、
 ブラジルまでたどり着いちゃうからな」


「俺なんて俺なんて……

 う……ブラジルが出されちゃうと、
 それ以上に深いものが思いつかない……」


「親父の負けな!」


 「悔しすぎる!!」


 お兄ちゃんもお父さんも、
 小学生並みの言い争いなんですけど……


 
 私が二人を見て、クスクス笑っていると、
 お父さんが私を見て微笑んだ。


「あの時も、こうやって笑ったな。
 りっちゃん」


「え? あの時って?」

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