白雪姫に極甘な毒リンゴを
お兄ちゃんが、極甘毒リンゴを手渡して
告白してくれたあの日から、
約2週間がすぎた。
今日から3学期。
お兄ちゃんは寮を引き払って、
このお家から高校に通うことに。
7時前に家を出るお兄ちゃんのために、
私は5時半起きで、
お弁当&朝ごはんを作った。
私が作った朝ごはんを
お兄ちゃんが食べてくれたから、
なぜかにやけてきちゃって、幸せな気分。
エプロン姿で、
お父さん用の朝ごはんを
テーブルに並べていた時、
お兄ちゃんに大声で呼ばれた。
「りっか~」
あっ、もうお兄ちゃんが家を出る時間だ。
パタパタとスリッパを鳴らしながら、
玄関まで駆けていくと、
黒い学ラン姿のお兄ちゃんが。
お兄ちゃん……
似合いすぎなんですけど、その学ラン。
ど……ど……どうしよう……
私の高校の制服より、
むしろ、こっちのお兄ちゃんの方が
かっこよすぎかも……
こんなお兄ちゃんが、
片道1時間も電車に乗っていたら、
きっと、いろんな女の子に
声をかけられちゃうよね?
私なんかよりもかわいい子が現れて、
その子のこと、好きになられちゃったら……
私が挙動不審だったのがばれたのか、
「六花、今、変なことでも考えてたろ?」
と、お兄ちゃんに見破られてしまった。
お兄ちゃんに恥ずかしくて言えないよ……
誰かにお兄ちゃんを取られないか、
心配だなんて。
「俺の学ラン姿、似合ってない?」
いきなりお兄ちゃんが、
自信なさげにうつむいたから
びっくりしちゃった。
「そ……そんなことないよ。
むしろ逆というか……
かっこよすぎて……心配というか……」
「心配って、何が?」
「え……と……
電車の中で、たくさんの女の子に、
声をかけられちゃうんだろうなって」
言っちゃった後で、
恥ずかしさが襲ってきた。
そんな恥ずかしいこと、
口が裂けても言わないつもりだったのに……
お兄ちゃんは優しく微笑むと、
私をがばっと抱きしめた。
「安心しろ。
俺、六花以外の女は目に入らないから」
ひゃ~~!!
お……お兄ちゃん……
いきなり抱きしめるなんて反則だよ。
そんな優しい笑顔で、
甘い言葉をささやくなんてレッドカードだよ。