白雪姫に極甘な毒リンゴを
北海道の高校への転校手続きは
済ましてあったけど、
モデル並みに綺麗な学園長にお願いして、
また今までの高校に
通わせてもらえることになった。
お兄ちゃん情報だと、
十環先輩が、私がこの高校に通えるよう、
美魔女学園長に頼んでくれたらしい。
今度会ったら、
十環先輩にもお礼を言わなくちゃ。
そう思いながら学園の門をくぐると、
朝から元気いっぱいの声に呼び止められた。
振り向くと、バスケ部の朝練終わりで、
まだジャージ姿の紫音くんが。
「紫音くん、この前はありがとう。
お兄ちゃんの居場所を、教えてくれて」
「で、どうだった?
うまくいったわけ? 一颯先輩とは」
「……うん。
好きだって自分の思いを伝えたよ。
それでね……付き合うことになった」
「六花、よかったじゃん」
紫音くんはかがみながら、
私の頭をワシャワシャ手で撫でまわした。
「ちょ、ちょっと。そんなに撫でられたら、
綿菓子みたいになっちゃうよ」
「アハハ。
六花、相変わらず面白いこと言うよな。
で、かっこよかった?
一颯先輩の学ラン姿」
お兄ちゃんの学ラン姿?
思い出しただけで、
顔が火照ってきちゃうよ。
私は素直に、こくりとうなずいた。
「六花がうらやましい!
今度写真くれよな。
一颯先輩の学ラン姿の写真。
俺の生徒手帳の中に入れて、
毎日持ち歩くんだから」
「相変わらず紫音くんは、
お兄ちゃんLOVEだね」
私がクスクスと笑っていると、
紫音くんがいきなり真剣な瞳を向けてきた。
「一颯先輩のことで辛いことがあったら、
真っ先に俺のところに来いよ」
「え?」
「六花以上に好きな子ができるまでは、
今までみたいに一颯先輩の愚痴、
聞いてやるからな」
「紫音くん……」
「でもその代わり、
俺も姉貴のこと愚痴るけど。
あ、俺、早く着替えなきゃいけないんだった。
六花、またな」
そう言って、
あわてて走り出した紫音くん。
しばらくの間、
優しい紫音くんの背中を見つめていた。