白雪姫に極甘な毒リンゴを
その後、俺が腕をほどくと、
六花は崩れ落ちるかのように、
その場にしゃがみ込んだ。
俺も、六花の隣に座って、
愛くるしい六花の瞳を見つめている。
「六花ってさ、かわいいよな」
「か……かわいくなんてないよ」
「六花は本当にかわいいよ。
初めて出会った、2歳の頃からずっとな。
でも、もっとかわいくしてやる」
「え?」
さっきみたいに逃げられたくない。
俺は逃げる間も与えず、
六花の唇に自分の唇を重ねた。
「お……お……お……
お兄ちゃん……」
「ほらね。もっとかわいくなった。
ほっぺまで真っ赤」
「ひゃ!!」
両手で顔を隠しながら、
顔をぶんぶん振っている六花。
行動が、一々かわいいんだよな。
もっともっと、
六花をかわいくしてやらないと気が済まない。
俺は、自分で作った白いワンピースを
六花に差し出した。
「六花、これ着て」
「え? い……今?」
「そう。今。
今すぐ着てくれないと、このワンピース、
クラスの女子にあげちゃうからな」
他の女にあげる気なんて、1ミリもない。
六花の笑顔を見たさに、
1針1針、六花への思いを込めて
仕上げたんだから。
「……イヤ。
他の子にあげるなんて……
絶対にイヤ……」
この、口をつぼめて拗ねる六花も、
かわいくてたまらない。
『他の女なんかに、絶対にあげないし』って、
本音を言いそうになったけど、
もっと六花の困った顔が見たくて、
ちょっとイジメてしまった。
「茜の方が、似合いそうだしな。
あいつにあげちゃおうかな」
もっと拗ねろ! 拗ねろ!
で、俺に言い返せよ。
俺に強気で言い返す六花も、
俺は大好きだから。
俺がニヒヒと笑った直後、
後悔の波が押し寄せた。
六花さん……
涙をこぼして泣きだしちゃったし……
やべ! ちょっとからかいすぎた。
前カノの名前を出すなんて、無責任だったよな。
このワンピースは、
六花以外に似合う奴なんているわけないじゃん。
それなのに、茜の方が似合うなんて、
絶対に言っちゃいけないことだって
言う前に気づけよ!
俺のバカ!
六花は、瞳にためきれなくなった雫を、
ぽたぽたと床にこぼしながら、
ぼそりと言った。