白雪姫に極甘な毒リンゴを

「この家を出るかぁ……
 考えたことなかったな……」


 俺は、
 ごんぞうを抱きしめながら考えてみた。


 六花がいない、色のない世界を……


 その時
「おにいちゃん! できたよ! 夕飯!」


 俺のことを怒ってます!って丸わかりの声が
 1階から聞こえた。


 そりゃそうだよな。


 せっかく届けてくれた
 たこ焼き弁当も食べない。


 七星が家に来た時に、
 『六花はいない』と嘘ついた。


 そんな俺に六花が怒って当然だよな。


 でも俺は……
 絶対に六花を……
 誰にも渡したくない……


 一生、
 六花の兄でいるしかないのなら……
 宝箱の中にそっと六花を入れて、
 鍵を掛けたいくらい……


 は~


 この思いを隠すために、
 また六花に『悪魔兄ちゃん』で
 接しなきゃな。


 俺は鏡の前で、自分の顔を確認して、
 悪魔モードでキッチンに向かった。


 キッチンに行くと、六花はいなかった。


 テーブルには、俺の料理が並べられていて
 勝手に食べてと言っているようだった。


 リビングの隣の和室を見ると、
 『お兄ちゃん、大嫌いです』と
 言わんばかりの顔で、
 六花は洗濯物を畳んでいる。


 その時

「ただいま」

 親父が帰ってきた。
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