白雪姫に極甘な毒リンゴを
「スカートはくるぶしの長さ。
シャツのボタンは全部止め。
コンタクト禁止。化粧禁止。
メガネかけろよ。髪はおさげで行けよな。
で、最後に……」
お兄ちゃん、
最後の言葉まで言わなくてもわかっているよ。
毎日聞かされているんだから。
「男とは絶対に目を合わせるな!
六花はブスなんだから、
お前なんかが男を見ていたら、
キモがられるぞ!」
「わかっているよ、
私がブサイクだってことくらい……」
「ならいい。
俺、先に学校に行くから、お前も遅れんなよ!」
そう言って、赤い悪魔は去って行った。
は~。
やっと学校に行ってくれたよ。
お兄ちゃんがいなくなった途端、
家の中が平和になってくれた。
でも、この平和な時間を満喫している余裕は、
私にはない。
早く洗濯物を干して、学校に行かなきゃ!
私は、洗濯物を干し終え、
胸まである髪を2本のおさげにして、
コンタクトからメガネに変えた。
あとは、バックにお弁当を入れて……と……
ん?
テーブルの上に、
仲良しカップルのように並んでいる、
2つのお弁当箱が。
もしかしてお兄ちゃん、
お弁当を忘れていった?
ひどい!!
お兄ちゃん、ひどすぎるよ!!
お弁当はたこ焼きが良いって言うから、
5時起きでたこ焼きを作ったのに……
忘れていってるなんて!!
しょうがない……
お昼休みに届けるしかないか……
バックにお弁当を2個つめ込むとんで、
私はいつものように学校までダッシュした。